purple唯一のメンバー、K大のK。彼はpurpleが発足して以来、毎週末東京からつくばに高速バスを使ってまで来ていた。もちろん来てくれないと活動できないわけだからどうしようもないのだが、その情熱は大したものだと私も感心していた。しかし、その情熱が、そのまま集客につながるといえばなかなかそういうわけにはいかないらしい。 我々purpleは相変わらず、どうしたら人が集まるのか、考えていた。前回お話ししたように、自分達のイメージは確実に具現化しているように感じているのに何故かごったがえさない。期待とは裏腹に私のマンションは文化的なサロンなんてとんでもない、単なるうるさい箱に過ぎなかった。 今思えば楽しい時間だったように感じますが、その時は心死でした。 オープン後2時間経っても誰も来ない部屋。 余程行き詰まっていたのか、自分達を客観視したかったのか、「ちょっと、客として入ってみるか」と、シュミレーションしてみた。音量を上げ,玄関いや、エントランスで香をたき、部屋を出た。そして階段口の辺りからスタートした。 「最近できた箱ってココか?」 「行ってみるか?」という小芝居でドアの前まで行く。 「何か、グルーヴしてねえ?」 「いいねえ。」 「ガチャッ。」 アイズレーブラザーズの『work to do』が聴こえている。 「いい。」 「何が悪かった?」 「分からん。」 客観的な主観で見てしまっていたようだ。「またかぁ。」とボヤきながら『CDグルーヴ』を見て反省会。 Kは朝また高速バスで帰っていった。 嫌だったんです。体育会系に染まるのが。部活仲間でつるむのが。でもツッパっていてもpurpleが小粋な文化グループになるわけではない。しかし妥協はしたくない。 でも・・・・。 結局背に腹は代えられなかった。酒の賞味期限は心配なかったが、我々の気持ちの方が、悪るくなり始めていたのだ。 私は部の中で仲の良かったメンバーと、音楽が好きと聞いたメンバー数人ずつに声を掛けた。 その単純な効果がpurpleに訪れた。1つのキーワードとしていた「スノッブ」という言葉を代償に。 その週末の夜、私のマンションが初めてクラブ化した。声を掛けたメンバーがそれぞれ女の子も連れてきてくれ、十数人の客が来てくれたのである。十数人も来れば8畳程の部屋はいっぱいになった。 音も偏りが無い方がいいだろうということで、ロック、フリーソウル、ボサノバ、テクノ、ハウス、ドラムンベースなど、できるだけ異和感の無いように繋いでいった。 クラブに来る人間というのは、純粋に音を聴きに来て踊っているのよりも、大音量のノリのいい音楽を聴いて異性と密着して話したいという方が多いと思う。 だからいくら我々が、こだわった音をかけても、「ズン、ズン、ズン・・・」という低音のリズムが響いていればよいという感じであった。でも人で賑う部屋はよかった。楽しかった。 それなのに、やっとそうなってきたのに、 「ねぇ、パフィーはかからないの?」 という酔っぱらいの一言で崩れさった。 「そうだよ、あれかけて。CMのやつ。」 UAもかけたし、スカパラもかけた。birdもかけたじゃん。 なのになんでそんな事言うの?私は心の中でうなだれながらつぶやいた。Dragon Ashまでだったら俺も気持ちよくかけたよ。でもパフィーはさあー。悪い連鎖反応というのは本当に続く。打ち合わせでもしているかのように。「これ何だあ」という声と共に部屋が明るくなった。「そりゃスイッチだよ。」思いっ切り言ってやりたかった。暗黙のルールくらいあるよ、こんなイベントだって。そして、そんなハイレベルなボケに気を取られている間に、キッチンの冷蔵庫が襲われていた。もう好きにして下さい。 人が来たというノルマ以外何も得ることのできなかったその深夜、例の番組を見ながらいつもの反省会が行われた。 「俺達さあ。散々部屋セッティングして、いい音用意して雰囲気作ってさあ、結局酒おごっただけだよ。」 「あんなにやってあんな思いして酒おごってんの。」 大爆笑だった。2人で数分間。「なまらウケる」を久し振りに連発した。しかもただの笑いではなく嘲笑だったから尚のこと面白かった。 数字的にはマイナスしか生まなかった。スタイリストのような服の売り買いをしていた時のように。しかし、無じゃない。 変化を生んだ。それがマイナスを含むものだったとしても。 purpleはやっとスタート地点から動き出した。 purpleの面白エピソードはこれくらいでしょうか。この後purpleは寮の共用スペースをジャックし、仲間を増やし、30~40人は集客するイベントをすることができるようになった。Kに高速バスの交通費と小遣いを出してあげられるようにもなった。 学生生活における私の青春。 こうやって振り返ってみると案外なかなかだったのかな、と思います。